水仙

土曜日の夜——もう日曜日になっていたか——、次男が熱を出した。つい先日まで長男が溶連菌で寝込んでいたから、うつってしまったに違いないと検査をしてもらったが感染はしていなかった。ただの熱ならすぐ下がると思ったが、水曜日まで熱は高いままだった。木曜日にようやく下がったものの、今度は治りかけのためか機嫌が悪く、抱っこから降ろそうとするものなら、目をぎゅっとつぶり、口をひん曲げてヒェッヒェッと声を上げ、これから大泣きするぞと脅してくる。
熱が出ていた頃は夜も比較的静かに寝ていたのだが、熱が下がってからは落ち着かず、木曜日の夜は不寝の番となってしまった。長男を保育園に送り出し、その間に寝てしまった次男を抱っこしたままダイニングチェアに腰かける。携帯の充電器はここにしかないのだ。
昨日も、一昨日も、その前も、この時間の昼寝は2時間続いた。きっと今日もそうだろう。何をしようかと考えながらアンインストールしたはずのSNSアプリを再インストールする。抱っこ紐の中で寝てくれるなら、掃除機をかけたり食器を棚に片づけたりするくらいはできるなあと思いながら、画面をスクロールしていく。
子どもが寝ているからだったか、面倒なだけだったか、ダイニングの電気はついていない。光熱費が気になって暖房の温度は低いが、ダウンジャケットの着ぶくれはちょうどよかった。

椅子に腰かけてからどれほどだったときだろう、何か、強い芳香がした。ふわっと香るなんてものではなく、私の鼻を目がけて四角い塊が入ってきたのだ。驚いて顔を上げる。テーブルに置かれた水仙を見つめる。しかし、水仙は今までと変わらず長男の椅子を向いて胸を反らしていた。じっと見つめていると、今度は漂うようにしてあの芳香が顔の前を通り過ぎた。そういえば花屋のお姉さんは香りがいいと言っていたのだった。
2日前に買って今まで香らなかったのは私のせいに違いない。改めて見れば、尖った花弁は手招きしているようでもあった。
夕べ、夫が金曜日である今日の夕飯はいつものミールキットではなく、特別なものが食べたいようなことを言っていたのを思い出し、レシピのクリッピングアプリを立ち上げる。