anti-stagnation

雨の日は気分が落ち込む。落ち込んだ気分を無理に立て直そうとせず、引きずり引きずられるのも偶にはいいだろう。
今日は休日なのだから。

ベッドから起き抜け、顔を洗い、ひとりリビングのソファに座る。
とり込んだまま畳んでいない洗濯物、寝る前に白湯を飲んでそのままのマグカップ、未読通知が溜まったSNS。全て見ないふりをして今日は何をしようと考える。

今年の冬はあまり気温が下がらず、まだ3月も半ばに差しかかったばかりなのに、桜のつぼみは色づき始め、草木がもぞもぞと動き始めた。この週末は里山か自然公園へかに行こうと楽しみにしていたが、今日は急に冷え込み、雨まで降るものだから、出かける気力はすっかり萎えてしまっていた。

とりあえず朝ごはんを食べようかと立ち上がる。スリッパを履きなおしたところで、昨夜酔った勢いで食べ過ぎ、まだ重い胃に肩を掴まれソファに再び座らされる。何をしよう。

やりたいことはたくさんある。
本が読みたい――しかし、今読みさしている本は面白く、靄がかった頭で読むには勿体無い……
そういえば、仕事中に分からないことがあったのだ――しかし、調べようにも資料の一部を会社においてきてしまっていた……
雨の休日は手の込んだ料理をするにうってつけだ――しかし、お腹が空いていない……
そうだ、見たい映画がようやく始まったのだった――しかし、上映時間まであと2時間ある。中途半端だ……
肩こりがひどいからサウナに行きたい――しかし、生理がきてしまった……
エトセトラ、エトセトラ……

やりたいことを挙げ、ひとつずつやれない理由でもって打ち消し、いかにも怠惰な人間らしい気力のなさを誤魔化しながらふらふらと寝室へ戻る。

目覚めたときに遮光カーテンを開けたおかげで、窓の外は雨ではあるが室内はほの明るい。布団に足を入れ、座ったまま未読のメッセージをひとつひとつ確認する。もはや陰鬱ですらない表情のない顔で、近い未来の楽しい予定の話題に可愛らしい絵文字を付す。

横になり、頭まで布団を被る。
部屋着のスカートが皺になっても構わない。

目を覚まし、おもむろに携帯に手を伸ばし、未読のままにしていたメッセージを開き、アプリを落とす。
とつおいつ……ふと頭に浮かんだその言葉を、私のためにあるようだと一瞥して再び布団を被る。

時間を確認するついでにTwitterのpostを見返していたら、眠る前の私はひどく落ち込んでいるようだった。
何がそんなにつらかったのだろう。
携帯の画面を落とし、目を瞑る。

そろそろ夕飯のことを考えるべきか――空っぽの胃はまだ重い。